2017年11月6日月曜日

海外で「日本酒」が本格的に造られ始めた理由:アメリカ産日本酒は輸出量の3倍

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 私に酒の味などわかり様もない。
 単においしいと思えて、酔えればいいだけである。
 フジマートで日本酒が買えるようになってからそれまで安ワインのカスクから完全に箱の酒に乗り換えてしまった。
 もちろん高い酒も置いてあるが、箱の酒で十分である。
 だいたい箱の酒は純米酒が多い。
 根がいやいのである。
 かっこ良さなど微塵もない。
 飲めればいいのである。
 それに日本酒が飲めるのに、なにもワインなど飲む必要もない。
 でもちょっと心配なこともある。
 酒量がガクーンと増えたのである。
 2リッターの箱の酒を週1本半から2本ほど飲んでいた。
 今、それは3本になっている。
 一日5合といったところである。
 さて、これは多いのか、これでいいのか? である。
 まあ、残されたわずかな命なら、飲みたい時に飲んでオサラバしたいものだと思ってはいる。
 歌の文句に「朝寝朝酒朝湯が大好きで、それで身上潰した」とあるが、庄屋さんほどの財なら「朝寝朝酒朝湯」では潰れない。
 身上を潰すのはバクチに女である。
 どうでもいいことだが。

 ちなみに書いておくと、できればぬる燗がいいのだが、面倒なので常温(すなわち冷や)でそのまま飲んでいる。
 冷やしても美味しいのだが、お腹が弱いので冷たいものはどうしても控えてしまっている。
 よってビールはほとんど飲まない。
 日本にいたころのお酒は一級二級という分類であった。
 この時の日本酒はアルコールと水あめを溶かして作ったもので、飲み過ぎるとひどく悪酔いする。
 また、こぼすとベタベタした。
 添加糖分の水あめのせいである。
 だから私自身も悪酔いをきらって、日本酒はたしなむ程度であった。
 こういうことから国内においても清酒離れが進行した。
 ウイスキーに行く人もいたが、多くは焼酎に行き、お湯割りがはやった。
 日本酒はみるも無残な姿に落ち込んでいった。
 この時、あるお酒が危機を救った。
 「越乃寒梅」である。
 アルコールも水あめも加えない酒が脚光を浴びたのである。
 ここから添加物を入れない地酒ブームが勃発する。
 純米酒が生まれ「米だけの酒」が生まれる。
 一級二級といった分類がこれで崩壊する。
 吟醸とかいう分類に変わっていく。
 今飲んでいる日本酒はまったくと言っていいほど悪酔いはしない。
 有難いことである。
 逆に言うとその分、飲む量が進むということにもなる。
 そして一日半升ということになってしまったわけである。

 そんなことで日本酒がらみの記事があるとついつい手が出てしまう。
 

ダイヤモンドオンライン 2017.11.6 芳賀 真:ジャーナリスト
http://diamond.jp/articles/-/148124

海外で「日本酒」が本格的に造られ始めた理由


●フランス・パリで10月7~9日に開催された日本酒イベント「Salon du Sake」
 
 ユネスコの世界文化遺産にも登録された日本食が、“ライト&ヘルシー”の代名詞として海外に広がる中、日本の国酒「日本酒」も世界に静かなブームを巻き起こしている。
 訪日外国人観光客が伸長するなか、「日本酒」のプレゼンスも拡大。
 「飲みたい」「知りたい」「学びたい」から、さらに大きな“日本酒愛”へと発展し、外国人が自国で「sake」を造る動きが生まれている。
(取材・写真・文/ジャーナリスト 芳賀 真)

🔷和食とともに世界に広がる日本酒
フランスで開催されたイベント

 イタリアの中華料理店に「サケ」があったので頼んでみたら、出てきたのは中国製の蒸留酒「白酒」だった。
 アメリカでは、おちょこに入った日本酒をビールに落とす「サケ・ボム」を見て、悲しくなった。

 日本酒といえば「あつあつに温めて飲む酒」と思われていることも多い。
 でもこれはすべて過去のお話。和食が世界に広がるにつれ、ようやく正しい日本酒が海外にも伝わるようになってきた。

 財務省関税局のデータによれば、昨年の清酒輸出金額は前年比11%増の156億円、輸出数量も9%増と、7年連続で過去最高を記録した。
 輸出先トップはアメリカ、次いで香港だが、ヨーロッパへの輸出も2ケタ増、なかでもフランスは母数こそ少ないながら4割増と伸長した。

 10年前と比べると、3倍以上に拡大している。
 そんなフランス・パリで10月7~9日に開催された日本酒イベント「Salon du Sake」でも、「日本酒新時代」の到来をひしひしと実感することとなった。

 4年前の初開催時にはわずか50アイテムほどだったのが、今年は350アイテム以上が出展された。
 来場者は3日間で4000人を超えた。
 主催するフランス人ユエ・シルヴァンさんは輸入元でも販売元でもなく、日本酒を世界に広げたいという熱い想いだけでこのイベントを続けている。

 「日本酒の普及には教育こそが何より大切」との考えから、ただブースを並べるだけの試飲会にとどまらず、「アトリエデギュスタシオン」と銘打った利き酒セミナーでは、パリを代表するパティシエ ジャック・ジュナン氏が勧めるデザートとのマリアージュや、羊のチーズやバニラアイスクリームの燻製、サフランやトウガラシなどのスパイスを効かせたフランス料理など、日本人には思いもつかないようなテーマで日本酒とのペアリングを提案した。

 今年ミシュラン2つ星をとったばかりのレストラン「Kei」のシェフ小林圭さんも、
 「フレンチに合わないかぎり、日本酒は定着しない」
との考えから、あえて日本風の料理を避け、
 「手取川」の山廃にシェーブルチーズのムース、
 「真澄 山花」に柑橘系のデザートを考案。
 「華鳩」貴醸酒×鳩とフォアグラのパイ包みも拍手喝采で迎えられた。

🔷どうすれば日本酒が広がるか
熱い討議も繰り広げられた


●イベントを主催するユエ・シルヴァンさん。10年にわたり日本酒の啓もう活動を展開

 このイベントはまた、ヨーロッパで日本酒を広げようと活動を続けるインポーターや販売店の情報交換の場でもある。
 「ヨーロッパ酒サミット」では、ヨーロッパ12ヵ国で日本酒をプロモートする方々が登壇し、どうすれば日本酒が広がるかについて熱い討議も繰り広げられた。
 「日本のお酒の魅力をどうすれば伝えられるか」
 「自国の文化にどう合わせられるか」
を話し合っている姿を見ていると、日本人の知らないところで日本酒の舞台が広がっていることを実感させられる。

 例えば、日本人は皆、紹興酒が中国のお酒であることを知っているが、その原料が何で、どのように作られているのか、どんな種類があるのか知る人はそれほど多くないだろう。
 海外における日本酒も、同じような位置づけといえる。
 ラベルを見ても日本語だけではちんぷんかんぷんだし、蔵元にしても海外市場にどう売ればいいのかわからない。
 でも、海外の「日本酒サポーター」たちは、自国の文化にあわせた日本酒の魅力を発信しようとしている。

 今回の「Salon du Sake」でも、フランスを代表するソムリエ グザビエ・チュイザ氏を審査委員長に迎え、フランス人によるフランス人のための日本酒のコンクール「クラマスター」を初開催した。
 授賞式では、フランス人から「日本酒は白ワインの脅威になる」とのコメントも飛び出した。
 同コンクールの審査結果はネットで見ることができるので、フランス人の味覚で選んだ日本酒の傾向を日本で確かめてみるのも面白いかもしれない。

🔷愛するがあまりに自分の国で“日本酒”を造る


●スタッフの家族もお手伝い。試飲グラスはワイングラスとおちょこの2種類を用意した

 だが今回一番興味をひかれたのは、日本酒を愛するあまりに「自分の国で日本酒を造る」造り手が増えていることだ(日本で造るわけではないので、正式には「日本酒」ではないのだが)。

 既にフランスには2つの酒蔵があり、準備中の蔵も3つ。
 日本から米を輸入するだけでなく、
 フランスの米どころカマルグで、日本の酒米をあいがも農法で育てる造り手すらいる。
 これまで、アメリカや中国など需要の大きな国に、日本資本による日本酒工場ができたことはあったが、今回の流れはこれまでとは違い、日本の資本は入っていない。
 ただ、好きだから。それだけで皆、日本酒を造り始めているのだ。

 アメリカでも、クラフトの聖地ブルックリンに11月、アメリカ産山田錦を使って造るクラフト日本酒の醸造所がオープンする。

 日本酒を愛するメキシコの富豪が多額な投資をして造った日本酒蔵「NAMI」の酒は、日本でも驚きをもって迎えられた。

 日本の資本協力もなく、日本酒を造り始めた彼ら造り手に共通するのは、ただ一つ。
 「日本酒が大好き」という思いだ。

 実をいうと、日本酒の輸出が増えたといっても、例えば輸出先トップのアメリカへの輸出量は約5000klだが、
 アメリカ産日本酒の生産量はその3倍以上の1万6000klを超える。

 日本食ブームに沸いたアメリカや需要の大きい中国などでは、「輸出するより安いから」という理由で、昔から「現地生産」という手段で日本酒を作ってきた。

🔷新しい「Sake」が世界を席巻する日も近い!?


●スペインで「絹の雫」を造るアントニオ・カンピンスさん。日本酒に関する著書もある

 今回の流れは、それとはまた違う。
 新しい造り手たちは、日本酒を「飲みたい」「知りたい」「学びたい」から、
「造りたい」と思い、その思いを実現させている。
 そして、「世界の日本酒市場には大きな可能性がある」という見解も一致していた。

 スペイン・バルセロナの大学で日本酒の講座を持ち、地元で日本酒「絹の雫」を造り始めたるアントニオ・カンピンスさんは、「スペインでは10年後、日本酒の消費が100倍になるはずだ」と期待する。

 彼が造るにごり酒には「トリュフを添えたクリーミーなスクランブルエッグが合う」し、純米酒には「地元の豆と肉のシチュー」がぴったりだと話す。

 日本酒に惚れ込んだフランス人オーナーが日本から杜氏を招いて今年から生産を開始する「Les Larmes du Levant」でも、
 「華やかな香りを持つ日本酒は、食事の邪魔になる。
 味と輪郭がはっきりしたクラシックな日本酒のスタイルのほうが、フランスでは受ける」
という考えから「フランス人の味覚に合う麹を選択したい」という。 


●ヨーロッパ初の酒蔵ノルウェー「裸島」のブロック・ベネットさん(左)

 日本では新しい世代の作り手が新しいスタイルの日本酒を提案し、新世代のファンを取り込んでいる。
 でも、海外の新しい造り手が造りたいのは、彼らの土地の風土や料理にあう日本酒、まさに「地酒」なのだ。

 ワインはもう、和食や中華などどんな業態でも置かれるようになっているが、日本酒を国酒とするこの日本ですら、日本酒を出すフレンチやイタリアンを見つけるのは難しい。

 それなのに彼らは、地元のレストランからまず、日本酒を広げようとしているのだ。

 日本人は昔から、海外の文化を独自に改良しながら、世界をあっと言わせるようなものを造り上げてきた。カレーやラーメンはもはや日本オリジナルだし、「ジャパニーズウイスキー」はその好例だろう。

 これから日本人が知らない、新しい「sake」が世界を席巻する日が来るのかもしれない。



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